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死にたい人たちの発するメッセージを規制する動き

最近座間市の9人死体遺棄事件について、被害者がSNSツイッターで、#自殺募集 #自殺願望 #自殺希望者 #自殺仲間 #集団自殺などのハッシュタグを使って交流し、結果として犯罪に巻き込まれていたということをふまえて、政府がSNSの規制に乗り出すのではないか、という話しが出ていました。

正直、それは無理な話であって、彼らにとってSNSはある意味「助けて!」というメッセージを発する大事な場でもあるのです。また規制してしまえば、地下に潜ってさらに見えなくなってしまうだろうし、彼らの居場所がかわるだけで、何ひとつ根本的な解決とはならないでしょう。

残念ですが、淋しさゆえに犯罪者についていってしまうのも、それも本人が選んでいることです。
自殺サイトというものは昔からそれなりに存在していますし、今に始まったことではありません。
そこを規制したとしても、次々と別の形で出てくることでしょう。

それよりも根本問題を考えるならば、自殺者の多くは家族との関係に傷ついている人達なのです。
その根本問題に触れ、子育てや家族の在り方や本質的な人生そのものを考える、そんな啓蒙活動や教育も必要でしょう。

また、心理セラピーというものが劇的に死にたい人々を救ってきたという自負がありますから、もっと私たちのやるべきことがたくさんあると考えています。

命を絶つことで不安や恐怖を感じないようになりたい

私自身も今までたくさんの方々の「死にたい」に触れてきました。
ご家族が自死された受講生たちの話しで、自死した方達の生前の状態を聞いたり、また私も知人や友人の中に自死した方がいますが、彼らの命を絶つ直前の状態はとにかく心神喪失状態と回避・解離状態であり、自分のことや周りの事を考える余裕などはありません。

ただただ、今の苦しみから逃れたい、それだけです。
それは言葉を言い換えればこうです。
苦しみを感じたくないから、命を絶つことで不安や恐怖を感じないようになりたいです。

生きて息をするだけでなにかわけのわからない不安な感覚を「感じるのが怖くて、痛くて、辛い」から、苦しみから逃れるためにアルコールや薬物やあらゆる依存症などに耽溺して感じないように感覚をごまかしていても、それは長くは続かないものです。
だから彼らはますますしんどくなっていくし、苦しみから逃れることができる唯一の方法は「死を選択すること」なのです。

自殺の真の問題は「家族問題」である

そして、自殺を選ぶ若者の多くはほぼ家族の問題を抱えています。だから自殺の問題に真剣に取り組むのであれば、問題の本質は本人の心を占めている恐怖や苦しみの根源「家族問題」に焦点をあててケアをすることが大事だといえます。

私は政府が本気で自殺問題に取り組みたいのならば、いくらでも手を貸す用意はあります。「家族問題」に触れない限り自殺者は今後ますます激増していくからです。

しかし、現在は家族問題そのものにはプライバシーや個人が尊重されすぎていて、そこに誰も触れることはできません。子どもが長期ひきこもりや暴力や自殺や自傷行為に陥るほとんどの原因は「家族問題」なのです。

多くの家庭が「子ども自身の問題」を解決しようとしていますが、それは違います。子どもは「家族の問題」を体現しているだけなのですから。親がどういう子どもとの関わりを持っていたのか?そこに解決のヒントはあります。

親友A子の自死について…

さて、今日は思うところ在って、私の友人の話しを書いてみようと思う。
かなり長文になるが。。。

友人は若くて亡くなった。死因は自死。

もう12年前にもなる。
ずっと詳細を封印して語らなかったが、昨年で13回忌を迎え私の中でも一区切りついた気がするのでそろそろ触れてもいいかな、と思う。
それで多くの人のなんらかの助けになれば、と思っている。

とはいえ、自分にとっては忘れられない衝撃の出来事だったので、こうして書きながらも何度も手が止まる。

彼女はA子。私と仲良しでいつもバカ話で盛り上がるお笑い大好きの中学の頃からの親友だった。
あとで詳細は書くが、その当時深刻な家族問題を抱えていたが、そんなことはみじんも見せない明るい子だった。

A子は20代の頃に失恋がきっかけで精神が崩れうつになったりハイになったりを繰り返し〈いま思うと躁鬱だと思う〉精神病院に入退院を繰り返し繰り返し、、、。

一時的に退院すると今度はギャンブルと酒と男にのめりこみ、荒れ放題に荒れて手がつけられなくなり、競馬仲間のご主人と結婚したもののますます不安定になり、被害妄想がひどく統合失調症の状態となり、妄想から私と電話で大喧嘩になり絶縁。

その間、自殺未遂が何度も続き激しいときには包丁で切腹をしたり、とても激しくて手がつけられなくなり周りもみんな遠のいていった。

私と絶縁してから1年後に共通の友人から今度はA子が灯油をかぶって火をつけた、まだ息はあるがもう助からないらしいという電話を受け衝撃で動けなくなった。

そのとき私が思ったことは、いや、この人のことだからまた死ぬ死ぬ詐欺や。そんなはずはない、と。
しかし、死ぬ死ぬ詐欺ではなく、友人は「今度はだめだと医師が言っている」と。

今度は、というのは、彼女は過去に包丁で腹を切ること数回、何度も自傷と自殺未遂で入退院を繰り返していたからだ。

彼女が死んだ報を受けた10分後くらいに何もしていないのにテレビのスイッチが入りそしてすぐ消えた。びっくりして怖くなったが、「ああ挨拶に来たのだ」と思い、「そうか楽になれたんだね、来てくれてありがとう」とそうつぶやいた。

じつは危篤の知らせを聞いてから苦しみから逃れたくて逝こうとしているのに、まだ身体が3分の2以上焼けてしまった状態で苦しんでいるのだと思うと切なくなり、私は「もう楽になってもいいんだよ」と彼女に向かってつぶやいたのだ。伝わったのかどうか?はわからない。

その数時間後だったと思うが、息を引き取ったと聞いたときのショックと悲しみ。
もしあのとき「彼女の苦しみをもっと理解していたなら絶縁したんだろうか、もう少しなんとかできなかったか」と何度も悔やみましたがもうどうにもならなかった。。

愛する人はいつか自分の目の前からいなくなってしまう

彼女の苦しみに寄り添えなかった自分を恥じたと同時に情けなく何もしてあげられなかったことを悔やみ、この仕事をしながらもいつも彼女のことが頭のどこか片隅に置いてある。

A子は大きな家族の問題を抱えていた。
とてもイケメンのお父さんが父兄参観に来ていて、すごいなーかっこいいお父さんだなーと冷やかしたものだった。しかし、、、、その彼女の父親はとんでもない「自己愛性パーソナリティ」「サイコパス」的な、非情で冷酷かつ人というものは金づるとして利用することしか、考えない人物だった。

ある日小学校の頃?だったか、別府の繁華街を歩いてたら、父親が母親とは別の女性と腕を組んで歩いているのを見かけたという。
彼女の母親は知っていたようすだったが、父親が公務員だったためか、我慢していたようで、そのうち彼女の母親は彼女がまだ中学生の時に末期がんで亡くなってしまったという。

その直後に父親は別の女性と再婚した。
彼女はこの女性を母親として受け入れて、私の前でも「お母さん」と呼んでいたのを覚えている。私にも「新しいお母さんだ」と紹介してくれた。優しい感じの方だったが、今考えると「尽くすタイプの女性」だったような気がする。しかし、父親の酒と浮気と暴言暴力に耐えかねて、この再婚相手の女性も3年と持たずに家を出て行ってしまった。

このとき、A子は「愛する人はいずれ自分の元からいなくなってしまう」という深い恐怖と絶望を抱えたに違いない。
実の母親に次いで、継母まで自分を置いて出て行った、そのショックは計り知れない大きな傷になっただろう。愛する人は自分を置いて行ってしまう、という恐怖は子どもにとって死の恐怖に等しいからだ。

そうこうすると、父親の暴言暴力否定、そして、娘息子からの搾取など、ありとあらゆる悪行を尽くしたこの父親にたまりかねて、彼女は高校を卒業したと同時に神戸の看護学校に入った。その後、彼氏ができてとても仲良くしていたのに、2年ほどたったある日その彼氏から捨てられ、ほどなくして別の女性と結婚したことを知ってしまった。

崩壊していく心と身体

それからだった。彼女が完全に崩れ落ちてしまったのは。。。
自傷行為、自殺未遂、大量の睡眠薬、ギャンブル依存、不特定多数の男性関係、、、。

私達友人達は中学のとき5人で仲良しチームを組んで別々の高校に行っても、卒業旅行したくらいの仲良しだったが、みんなで彼女を心配して声をかけまくっていたのはこの頃。しかしますます悪化の一途をたどるばかりでなすすべもなかった。

ニコニコしながら毎食ごとに呑む大量の薬に驚いた。
おそらく15錠以上は呑んでいたと思われる。向精神薬や睡眠薬、肝臓や胃薬などものすごい量だった。

1日で50錠近くも飲むなんて信じられない、あんたほんとに大丈夫なん?
私は何度も何度も確かめたが、彼女はへらへら笑いながら「大丈夫~」と言う。

それから14年間くらいはその状態を繰り返しては、だんだんと悪化していき、しまいには被害妄想がひどくなって、やくざに狙われているといい、家の中は真昼でもカーテンを閉めているので真っ暗。。。

そして、ある日の朝ギャンブルで知り合って数年前に結婚したご主人が朝本人が灯油をかぶって燃えているのを見て救急車へ。
激動の人生をそのまま終えて逝ってしまい、取り残された私達は呆然とする以外なかった。

あれだけ仲の良かった5人組の仲良しはそれ以来、自然解散となってしまい、いま誰がどこに住んでいるのかすらも知らない。

なぜ「死を選んだのか?」その答えは本人にしかわからない

どういうわけか?彼女のお通夜の日が丁度、東京で初めて心理療法を学ぶ開講の初日だった。
私は自分へのメッセージとして心に刻んだのは、この日になったのは私にとっては偶然ではない、きっと私はこの衝撃を忘れることなく心理を生涯のテーマとして取り組んでいくのだろう、とうっすらと感じたのを覚えている。

そしてその通りとなり無我夢中で取り組んだ心理の仕事一筋に13年。とても早かったと思う。

亡くなった彼女が一番苦しかったのは、「愛する母親をガンで亡くし、父親が非情で冷酷、愛情を与えられずに育ち、愛情を渇望していたにも関わらずそれは得られることはなかった」こと。否定をずっと受け続けていた彼女にとって「自分は愛されないし、いてもいなくてもいい存在だ」と信じ込んでいたこと。

いまの私だったらわかる。
彼女は死にたかったのではない、生きたくて生きたくて、幸せになりたくて、愛されたかったただそれだけだったのだと思う。

そして、彼女は生きたいけど苦しいから苦しみを感じたくないあまりに「苦しみを感じない身体になりたかった」だけなのだと。。それが「自死」という答えに結びついてしまったのだろうと思う。人は苦しみの中に在るとき、視野が狭くなり、周りからどんなに手を差し伸べられていても、愛されていたとしても、気が付かないものだ。

死ねば、感じ無くなれば楽になる、というのは違う。逆に感じ方を変えることで生き方を変えることの方がはるかに楽になれるのに、と思う。とはいえ、死んでしまった本人にはもう語る口はない。

人は変わりたくない生き物

心理セラピストとして13年、そして心理セラピーを教える講師として、いままでもそういう受講生やクライアントに関わて来た経験から言えることは、人は変わりたくない生き物なんだという前提。

「今の支配関係をやめるつもりはないけど、でも苦しみを感じないように取ってほしい」そういうセラピーのオーダーがやってくるたびに、そう思う。
それは、自分の感覚や感情を切ってくれ、親との支配関係はそのままで、と。それは解決からほど遠い、苦しみを強化するものだ。

夫の支配から逃れたい、夫を変えたい、変わらないなら苦しみを感じないようになりたい
母の支配と依存から逃れたい、母さえ変わってくれれば、できないなら苦しみを感じないようにしてほしい
人が世間が怖くて言いたいことが言えない、でも今まで通り私は言いたくないので、苦しみを感じないようになりたい

などなどなど、、、この矛盾が常に生じてしまうので、本人自身も混乱からなかなか抜け出すことが出来ない。変わりたいの本音は、嫌な事から逃げたいだけの場合が多い。最初はそれでもいいのだが、ずっと続く場合は時間の経過とともに苦しみは増大していくだけになる。

生きることとは感じることにあり

また、、
生きるということは感じる、ということでもある。
五感という本能を備え持つ人間にとって、生きることは感情や感覚を感じること。怖いという感覚ですら、自分にとって自分の心と身体を守るために防衛してくれているわけであり、決して悪いものではない。

怖い、とか、不安、とかを否定して、酒やギャンブルや人に依存して、感じないよう誤魔化すから、なお一層怖くなってしまうだけ。「怖くて当たり前だし怖くていいんだ」と自分の感じていることを丸ごと受け入れるようになったら、混乱から一歩抜け出して心がすこし穏やかになるのを感じられるだろう。

そして、いま死にたいという人は言葉を言い換えてみればいいと思う。
私は死ぬほどの苦しみを感じないようになりたい、ほんとは愛を感じたいし幸せを感じたい、生きていたいんだ、とつぶやいてみたらいい。それが「死にたい人達」の腹の底からの真実の気持ちだからだ。

それでも死にたい人は私は止めないが、生きていればいくらでも、幸せを感じられるチャンスはある。感じるということは身体を持ってしか感じることはできない、だから私達は生きていく。生きることは感じること。幸せになること。身体を持って生きていれば幸せを感じられるチャンスはいくらでもある。

その最短方法としてまず、自分のことを知る、自分を知ることは過去の家族の問題を整理することだ。自分の中のこだわりや妄想の恐怖の原点は必ずそこにある。

私達心理職もいつも門を開け、手を拡げて待っている。
怖さはひとりでは乗り越えられない。だからこそ私たちのような専門家が必要だと思っている。

恐怖という自分の創り出した妄想の世界から出てくることを決めるのは自分しかない。でも決めたら本当に変えることはできる。それは確実に変えられるのだと知って欲しい。

そろそろ妄想の世界から現実の世界にでてみないか?あなたも。

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