2017年に入ってからこちらのコラムは初めてですね。
最近、日本人の傾向としてすごく気になっているのが、「人と親密になるのを避けて人間関係を回避してしまう」という人達が急激に増えているような気がします。今日は心理セラピストの立場として日本はこのままいくとやばいなーと感じているので、ちょっと長文ですが書いてみました。

目次

■なぜ日本人が回避傾向が強くなっているのか?

最近の日本人の多くが、いや正確には先進国全体の問題かもしれないのですが、人と関わらずに人との関わりを回避してひきこもり、社会と断絶して、SNSやテレビやゲームや漫画などのバーチャルな世界にひきこもる人々が増えてきたといいます。これはもう今更という感じがしないでもないが、それがあまりにも常態化してしまうと、社会に出られなくなり人が社会が怖くなってしまい、どういうコミュニケーションを取っていいのかわからない、という人があまりにも多いのです。

とくに日本人の多くは核家族化していて三世代で同居するという家族形態が失われつつあり、つながりよりも個を尊重するという社会の流れが行き過ぎて、独身時代は自立して個を楽しんでいればよかったものの、結婚して自分以外の他人を受け入れざるをえない状況が自分の個を奪われる感覚となりそれが大きな苦痛となり、家族という形態を好まないので結婚すら望まないいう若者が増えているというのです。確かに現代はコンビニさえあれば人と関わらずに生きていける社会です。

■回避とはどんな状態?

回避傾向というのはコミュニケーションにおいて、人との関わりを避け、親密な関係になることを怖れて関わりを避ける状態をいいます。

たとえば、こんなかんじ。
表面的には親しいフリはできるのですが、距離が近づいて親密度が増せば増すほどに相手の事が嫌になり、心から本音を打ち明けることができずに、人を心から信頼することができず、他人や親しい人に助けを求めたり、甘えることができない、そして結婚などのように「責任」を伴うような関係性が生じることを忌避し、愛情がいっぺんに冷めてしまったり、子育ても子どもに共感できずに子どもをうっとうしい存在と感じたり、自分の思い通りに支配しようとしたりしてしまう。

このように、回避という状態はさまざまな人間関係の問題となり、本人や周りの人々にはなぜそんなことになってしまうのか?原因もわからずに悩んでしまう人がとても多いのです。また実際に心理セラピーを受けに来る方には、この回避傾向が非常に強い人や、見た目は普通に社会生活を営んでいるのですが、じつは根っからの回避であり生き辛さをいつももやもや抱えているという方が意外に多かったりします。それは人に指摘されるまで気づかないのです。

■回避になってしまうとこんな状態に

・人づきあいがそもそも苦手で家に帰ると一気に疲れが出る
・集団は良くても個室で一対一になると息が詰まる、急に緊張する
・ネットやスマホなどの情報依存になりやすい
・恋愛はあっさりしたものがよくて相手が感情的になると一気に冷める
・信頼関係を他人との間で築きにくい、人を信用できない
・人に助けて欲しいと言えない、甘えることができない
・人に心からの本音を言えない、自己開示できない
・いつもひとりで頑張ってなんとか自分ひとりでこなしてしまう
・人とチームで仕事をすることが苦手、自分の成功を追求したい
・責任をとることがイヤ(結婚、子育てに問題が多い)
・人と共感的な関わりができないし苦手
・自分が何を感じていて何が欲しいのか自分がわからない
・笑顔でシールドを作りその場をやり過ごすクセがある
・子育てが苦痛で子どもに共感的な関わりが出来ない、子どもに甘えられたらどうしていいかわからない
・子どもを自分の思い通りにしようと支配する傾向がある
・未知の経験にチャレンジするのが怖くて現状維持に甘んじる
・働きたくない社会と関わりたくないお金だけ欲しいと依存対象に寄生する

これらの傾向が8個以上あったら回避傾向が強いと思われます。

■回避していると何が問題なのか?

人間関係を回避する傾向が強くなればなるほど、人と親密になることを忌避している分困難を生じるので、友人関係が長続きせず、恋愛も結婚もうまくいかないうえに、他人と何かを協力してやり遂げるということがそもそも難しいので、幸せやチャンスをつかみにくい傾向になるかと思われます。

実際にセラピーに来られる方の多くには子育てや結婚生活に大きな問題を抱えている人がじつは根底にはパートナーが回避傾向であることや、自分自身が回避であることから子育てがうまくいかず、子どもに情緒的な共感的な関わりができないので、子どもと対立したり、子どもを自分の思い通りにしようと支配する傾向が強くなったり、親密な関係性になればなるほど問題がますます大きくなってしまい、どうしようもなくなって心理セラピーの門をたたいてくる方がほとんどなのです。

そして仕事においても、回避傾向が強いほど社会的信用度も人望も低くなってしまうのでいろんなチャンスを逃しやすいといえます。一方で成功者に多いのですが、頑張っても頑張っても何かが違う気がする、という違和感を持っていて、お金がいくら入っても成功しても一時的な満足だけで、どこか充足感が得られない感覚がして、仮想の敵を自分の心の中で創り出したりして孤立を深めていくのもこの回避の特徴です。

このように人と愛情や信頼でつながれないことが人生の充足感やさまざまな幸福感を得ることが難しくなってしまうのです。では、このような状態をどうすればいいのか?ですね。

■回避傾向を改善するにはどうしたらいいのか?

これはまずは自分が回避傾向であるということをまず自覚することが大事だと思います。そう言うと、極端に自分が回避であることをまた人から否定されてダメな自分だと言われているように感じて、さらに自分を誇大に素晴らしい人間であるかのように見せようとする人が過去にいましたが、これは逆効果で「自分は回避です」ということを認めているようなものです。そうではなく、いままで人づきあいを回避することで自分が自分の心を傷つかぬように守っていたのだ、ということを認める方がはるかに人生が先に進むことになります。まずは認めて受け入れること。

そしてその次には、自分が主体的に人と親密な関わりを避けていたことで得ていたメリットを直視することです。人と関わらないことで親密さを忌避することで得ていたものは、責任を回避して他人のせいにしていたり、他人の心に共感的な関わりをせず孤独に頑張って成果を出すことで認められてきたり、感情を伴うパートナーや子どもから逃げることで関わらずに済んでいたり、いろいろとメリットがあるんです。そのメリットに直面することです。

そしてその次には、どうしてそのメリットが生じたのか?その原因は過去の親子関係から紐解いていくと必ずみつかります。その原因を見つけたら、もつれた糸をほどいて、本来の家族の中で生じた問題と正面から向き合っていくことです。
そして、自分自身の心の中に安全基地を作ること。これはリトリーブサイコセラピーの中でひとつひとつ解決していくことが可能です。

そしてその次には、自分が主体的に人生に責任を持って生きるというポジションに立つことで、本来の自己を回復させることができるようになっていきます。それが自分の人生を自分の手に取り戻すプロセスなのです。

■最終的に人は人と繋がることでしか生きられない

そして、最終的には人というものは孤独に生きるのは耐えられない誰かとつながっていきたい、という本来の欲求が湧き上がってくるものです。人とつながりたい、人と関わりたい、人と親密になりたい、人と一緒に共感して、一緒に笑って泣いて、想いや世界観を共有する仲間とつながりたい、そういう思いが自然にでてくるようになります。そうやって人とつながる喜びを体験することができるようになればしめたものです。人が怖くなくなって、社会に対する恐怖感もなくなりますから、ますます人に近づくことが怖い物ではなくなっていきます。すると相手からも近づいてきますから、良いサイクルが回りやすくなります。